今村 郁男

今村郁夫さん
児島君、あの案件どうなった?
何でこんなことになるまでほっといたんだ!
至急、メーカーの鈴木本部長つかまえて、対策練ろう
この案件、ひっくり返すぞ

血圧と目じりがつり上った状態でお稽古場のガラス戸を開く
久保先生と稽古人
一瞬の静寂
釜で湯の沸き立つ松風

はい、建水あげて
建水、建水、建水あげて
それは水指
はい、建水あげて

そうです、さっきより茶筅の扱いが良くなりましたよ

久保先生の指導のたびに、稽古人が赤くなったり青くなったり
稽古人の・・・のたびに、先生が鬼になったり仏になったり

いつの間にか、背負い込んできた煩悩の塊はどこか溶け去り
稽古場を出るころには気持ちのザワツキはなく、プレーンな自分に
仕事、恋愛、家族、健康、受験、就職・・・
誰もがそれぞれの煩悩を背負い込んでやってきて
稽古場に煩悩を置いて帰ります
いったいどれだけの煩悩が稽古場にはたまっているのでしょうか 

月に2回のお茶のお稽古は、いろいろな要素がありますが、自分にとって一番ありがたいのがトランキライザー 精神安定剤的要素です
今日のお軸は?お花は?お茶銘は?お菓子は?
前の稽古人の客として客の稽古、自分のお点前の稽古、道具の準備、後片付け
すべてが気持ちのザワツキに効くんですね
茶室には何も無いが、すべてが詰まっている
不思議な空間であることは、誰もが感じること

一二三会で稽古すること半年
初めての正月に親戚一同の初釜を思いつき
初めての茶道具屋でドキドキの道具を買い求め
いざ当日、本人大真面目の一挙手一投足に、一同クスクス
期せずしてお茶会コントになり

それから3年
甥と娘の大学高校進学祝いに茶会を開き
何でもない四畳半に掛け軸をかけると、いっぱしの茶室に
甥・娘に初めて披露する濃茶点前に自身ゾーンに入り
濃茶を差し出せば、甥・娘は茶室の魔力に
ぽつぽつと諭す言葉に素直に耳を傾けて
忘れられないお祝いとなりました

教養として、修行として、日本人のアイデンティティーとして、
そしてトランキライザーとして
お茶には、いろいろな関わり方があります
今まで素通りしていたことを素通りできなくなっている自分に気づくとき
つくづく自分の心の中に棲みついた茶道の存在をかみしめることでしょう
一二三会は、稽古人それぞれの「あれやりたい、これやりたい」に、
久保先生がちゃんと応えてくれる そんな稀代未聞なる集まりです
ためしに一度、稽古場にお越しくださいませ

一二三会の兎 今村郁男