お稽古場と水
日々の稽古を行うためには、やはり準備後片付けが欠かせませんね。
その中でも水へ対する思いがあります。
昔は井戸水をくみ上げて暮らしていたので、
準備の労力を考えると自ずと水へ対する関わり方が丁寧であったと想像できます。
私の稽古場では、朝、水道水の水を水甕に張り、ほんの少しの気持ちの問題ですが備長炭を入れて水を保管しています。
基本はその水甕の水を使って稽古の準備後片付けを行っています。
水甕の水を釜に入れ、炭の火力で鉄分いっぱいのお湯を作りお茶を点てています。
また、準備後片付けも水屋用の柄杓で水甕の水を汲んで清めています。
入門して間のない方は、水甕の隣にある水道の蛇口をひねって、すごい勢いで道具を洗っています。
あえて清めると言わず洗っていると言いますね。
水屋の周りの木製の壁を、勢い余ったしぶきで濡らしています。
その姿が、お稽古を通し、周りにいらっしゃる方の影響を受けて、
段々と静かな水屋仕事をされるようになりますね。
お点前中は水を大切に使った所作がありますが、
点前を離れた途端に水をジャブジャブ使う事に違和感を覚えた人から行動か変わっていき、
お点前にも変化が出てきますね。
これはほんの一例です。
稽古の終わりには水甕の水がいっぱいに残っている日があり、
その水をいつの頃からかバケツに空けて、
翌日の掃除や、草木の水やりに使っています。
何かに気づくとその一点を兆しに、いくつものことが変化してきます。
それが自然なように思います。
水が豊富にある国に生まれた私たちが、その恩恵に気づき小さな行動にあらわれてくることが尊いことと感じています。
また、その姿を見た人が真似ていく。
これでいいのだと思います。
何事もすぐに急いでしまう私には茶道があることで、
省みる時間を持てています。
茶道に出会えてよかったです。
令和5年 和暦葉月 新月