吉事 よごと

吉事 よごと

茶道の稽古の学び方の一つに、お茶を点てる時に使う茶杓についてお客様に伝える場面があります。茶杓は竹材で作られていることが多く、その茶杓に銘(名前)が付けられており、茶会や茶事の全体の取り合わせの一部として作った人や銘が反映されます。

その茶杓の作者と銘を稽古では、お点前をした人が当日の季節や趣向を加味し、即興で考え発言するのですね。

よくある銘として、季節の言葉や禅語を使う事が多いのですが、昨年からお弟子さんに和歌から銘を考えてくるように進めています。

日本の文化の根底には和歌があると考えているので、お弟子さん達にも和歌に触れてほしく茶杓の銘を発言する機会に歌銘を使うよう進めています。

一年経つと歌銘をご披露される方が増えてきましたね。

抹茶を飲むことが好きな高校一年生の賢二郎君は、お稽古に通い2年が経過しました。
学校の友達や、その友達のおばあさまやお母さまに盆略点前をしてお茶を振舞い、とても喜ばれた経験から、更にお稽古にも励んでいるこの頃であります。

賢二郎君から「先生、何かいい銘を教えてください」と言われたので、「新年早々に因み「『吉事よごと』はいかがでしょうか?」と伝えました。
「よごと???」
万葉集の一番最後の歌に「よごと」が使われています。
「では、万葉集は何首編まれているでしょうか?」
「???」
「では、何を見て、『よいことがあるかも???』」と万葉人は思ったと思う?」
「???」
「さあ、宿題ね!万葉集の最後の歌を調べる事」
「はい!!」

こうやって毎月、日本の美しい言葉や歌のリズムに触れ3年5年10年と経過した時に、彼の中にきっと奥深いものが形成されていると思いますね。

新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事  大伴家持

元旦に降る雪は、佳きことが訪れる予兆と受け取られていました。
今年も雪が幾多にも重なるように、良いことが皆様にも訪れることと存じ上げます。

令和六年一月新月